糸魚川での大規模火災 最短2日間で保険金を支払えた理由とは?

糸魚川での大規模火災 最短2日間で保険金を支払えた理由とは?

2016年の熊本地震に糸魚川市駅北大火、17年の九州北部豪雨、18年の西日本豪雨に北海道胆振東部地震──。近年相次ぐ自然災害のなかで、人ならぬ力が捜索支援や被害状況の調査に一役買っているのをご存じだろうか? ドローンだ。

「始めは自動車事故の業務支援を目的に導入しました。特異な事故の原因の調査に役立てるためです」

こう話すのは、ドローンを利用して数々の災害現場で捜索支援などを指揮してきた損害保険ジャパン日本興亜(以下、損保ジャパン)保険金サービス企画部技術部長の高橋良仁さん。

2018年12月18日発売のアエラMOOK『災害からお金を守る』によると、同社がドローンを導入したのは15年。交通事故の現場を空撮して周囲の地形を三次元化し、より詳細に事故を再現することで原因究明に役立てようと考えたことがきっかけだった。

だが、翌年の熊本地震をきっかけに、ドローンはその活用の幅を広げていく。

「4月に発生した地震の影響で熊本県南阿蘇村の阿蘇大橋が崩落し、大学生が行方不明になってしまいました。その後、数カ月にわたる捜索活動でも発見されませんでした。そこで、当社のドローンを役立ててもらえないかと自治体のほうにご提案させてもらったのです」(高橋さん)

ドローンが投入されたのは、震災から約4カ月後のこと。大学生のご両親が阿蘇大橋から約300メートル下流で乗っていた車の一部と見られる金属片を発見したため、その付近を集中的に捜索する計画だった。そこで、損保ジャパンのドローンで、橋から下流2キロにわたって谷底を撮影。周辺を三次元モデリングし、捜索部隊の車両搬出計画の作成に役立てた。

「最終的に発見したのは現場に通い続けたご両親と、早く見つけてあげたいと自主的に捜索を手伝い続けた地元の人たちでした。捜索範囲から外れた400メートル下流の地点で、知人男性が、乗っていた車を発見したのです」(同)

ドローンの活躍が直接、発見に結び付いたわけではなかったが、その後、損保ジャパンは熊本県と協定を結んで復興状況を空撮して県のホームページで一般公開するデジタルアーカイブ事業に協力。震災から半年後、1年後、2年後と計20カ所の定点撮影の支援を行っている。

「ドローンを出動してくれないか?」

熊本地震での活動が知れ渡った影響から、16年末には高橋さんのもとには、こんな要請も入るようになった。同年12月22日に発生した糸魚川市の大規模火災の現場調査の要請だ。市街地の広範囲に延焼し、計147棟が焼損。損保ジャパンの保険に加入する100棟あまりの被災状況を把握する必要もあったため、高橋氏は鎮火直後の現場にドローンとともに入った。

「自宅を失った加入者の不安を我々が解消することはできません。しかし、ドローンを活用して被災状況をいち早く確認できれば、早期の保険金の支払いが可能なると考えました」(高橋さん)

通常の火災現場であれば、調査員が現地に足を運ぶだけで事足りる。だが、糸魚川市駅北大火ではあまりにも広範囲に延焼し、建物の大半が焼失していた。早期に被災状況を確認するにはドローンがうってつけだった。

「屋根だけに飛び火して損傷したケースなど、地上からは把握できない被害もドローンを使ってすぐに確認することができました。ヘリコプターでも同じことができますが、ドローンならばより低い高度で建物に接近して撮影することが可能です。その映像をもとに被災地の状況を三次元モデリングし、Googleマップの被災前の画像と比較することで、瞬時に詳細な被害を把握することに成功したのです」(同)

その結果、損保ジャパンは最短のケースでは2日間で被害査定を終えて保険金の支払いを済ませたのだ。

17年の九州北部豪雨でもドローンの能力はいかんなく発揮された。被害発生から約1週間後に、高橋さんは甚大な被害を出した福岡県朝倉市へ。現場は豪雨で流された家屋や流木が行く手を阻み、土砂でぬかるむ通りが人の進入を拒んでいた。

立ち入り制限がかけられ、被災者も自分の住居の被害状況が把握できないなか、ドローン1機だけが被災地の奥へ奥へと分け入った。

「最も被害が深刻だった地区だと、立ち入り制限が解除されるまでに3カ月を要しましたが、我々はドローンを飛ばして2日間で被害の査定を終え、その日に保険金の支払いができたものもありました」(同)

大災害ともなれば、被災者は食べるものはおろか、衣服の確保もままならない。働き口を奪われることも少なくないが、自宅の修繕費用に、日々の生活費と出費は重なる。ドローンを活用して早期に保険金が支払われれば、生活再建がスムーズになることは間違いない。

そのため、損保ジャパンのドローンは18年の西日本豪雨や北海道胆振東部地震でもフル稼働。広島では県の要請を受けて土砂崩れで不通になったエリアの調査を担当。北海道では家屋の損害調査のみならず、最大震度7を記録した厚真町の厚真ダムの調査にも当たった。地震でダムの底に土砂が溜まり、決壊を懸念する声があがっていたため、ドローンを活用して点検作業が行われたのだ。2次災害のリスクもある危険な場所で、ドローンは着実に成果を上げてきた。

「本来であれば、被災地でドローンが“活躍しない”にこしたことはない。ドローンが出動するということは、それだけ大きな被害がもたらされ、人が足を踏み入れにくいということです。被害を防いだり、小さくしたりするためのドローンの活用法も研究しているところです」

17年12月には東京・新宿の超高層ビル街にドローンの姿があった。新宿区などとタッグを組んで、災害時の状況把握や帰宅困難者の誘導にドローンを活用するための実証実験が行われたのだ。

東日本大震災時に新宿区は職員を各地に派遣したものの、通信状況の悪化などにより情報共有が進まず、効率的な避難誘導ができなかったという。そのため、ドローンを飛ばして各地の被害状況を把握し、ドローンに搭載したスピーカーで被災者の避難誘導も行う実験が進められているのだ。

人の目となり口となり、手足にもなってドローンが災害時に活躍する日は近い。

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