ドローンスタートアップが130億円使うだけ使って消えた驚きの理由

ドローンスタートアップが130億円使うだけ使って消えた驚きの理由

130億円もの資金を集めたにもかかわらず、事業停止に追い込まれた企業があります。米Airwareです。ドローン業界では将来有望だと見られていた企業だけに、ブログの「Thank You.」という記事を残して市場から姿を消した同社に、衝撃を受けた関係者も少なくありませんでした。今回はAirwareの事業停止理由を探りながら、第二ステージを迎えているドローンビジネス市場の現状を紹介します。

●130億円を使いはたして事業を停止したAirware

2018年9月14日、Airwareが自社の公式Blogで「Thank You.」という題名の記事を掲載しました。それは事業停止を告げる内容でした。

このブログを受け、米国の技術系ニュースサイトTech Crunchが報道しました。しかしその後、このニュースがあまり取り上げられていないこともあり、事業停止に至った経緯は詳しく明らかになっていません。

Airwareは、2011年にジョナサン・ダウニー氏によってカリフォルニア州ニューポート・ビーチで設立されました。(その後、2014年1月にサンフランシスコに移転)。同社は異なるドローン間での自動航行のためのナビゲーションアプリや管理のためのクラウドサービスを開発し、ドローンのOS的なソリューションを展開していくことを標ぼうしていました。そして、そのコンセプトが評価され、以下のようにベンチャーキャピタルなどから投資を受けていました。

2016年のSeries Cの際には米シスコシステムズのCEOであったジョン・チャンバーズをボードメンバーに加えることで、経営環境を強化しました。

また、事業拡大していくための企業買収にも乗り出し、2016年9月にはドローンによるデータ解析のパイオニアであるRedbird社を買収しました。これは業務の幅を広げる目的以外にも欧州での進出の足掛かりにするという意図もあったのでしょう。 こういった経緯を見ると、Airwareはスタートアップ企業としては順調に資金を調達して経営体制を強化し、業務を拡大してきたようです。それがなぜ事業停止に追い込まれたのでしょうか?

●ドローンビジネスの歴史から見えてきた現在

Airwareの事業停止の原因を理解するには、これまでのドローンビジネスの歴史を理解する必要があります。

ドローンビジネスは、2005年に香港科技大学を卒業した汪滔(”フランク” ・ワン・ タオ)氏らがDJIを創業したときにはじまりました。それ以前にもドローンはありましたが、軍事用が中心でした。当時の産業用ドローンといえば、ヤマハ発動機がドローンで農薬散布をしていた程度でした。

2007年には当時「Wired」誌の編集長だったクリス・アンダーソンがコミュニティ「DIY Drones」を開始し、2009年に3D Robotics社を創業しました。そして、2010年にはParrot社がAR DroneをCESで紹介し、話題になりました。

Airwareも2011年に創業されており、このドローンビジネスの胎動期に立ち上げられ、先行的にドローンビジネスの立ち上げに貢献してきました。

2013年にはDJIがPhantomを市場に投入し、ドローンビジネスは次の段階に進みます。2013年末にはアマゾンが「Prime Air」の計画を発表し、2014年には北米のクリスマス商戦でドローンが人気になりました。

2014年まではコンシューマ市場での盛り上がりを示していたドローンですが、2015年に入ると様相が一変します。2015年1月にはホワイトハウスの立ち入り禁止敷地内にドローン(Phantom2)が墜落する事件が発生しました。日本でも2015年4月に首相官邸の屋上にドローン(Phantom2)が墜落します。

さらに、同年には米国の航空行政を担当しているFAA (Federal Aviation Administration)がドローンの業務利用に向けた指針(Section333)を発表します。なお、日本でも2015年末に、ドローンの利用を規定する「改正航空法」が施行されました。これによって、ドローンビジネスの中心はコンシューマ市場から、商用や業務活用市場に拡大したのです。

また、2016年には、DJIのPhantomの対抗製品を市場に投入していた3D Robotics社が、ハードウェア事業から撤退します。続く2017年にはコンシューマ市場を中心に製品を展開してきたParrot社でリストラが行われました。同社はこれを機にビジネスの中心をコンシューマ市場から業務活用市場にシフトします。そして、2017年には各社が独自開発していた自社ドローン用アプリケーションをDJI SDK(Software Development Kit)を使って、DJIに移植(対応)する動きが広がったのです。

このような動向を見ると、2017年までの5kgまでのクアッドコプター(4枚の回転翼ドローン)市場は、コンシューマ・業務活用を問わず、DJIの存在が強烈だったことがわかります。そして、「DJI一強」に収れんした結果、各社は新たな戦略を打ち出すようになったのです。

たとえば、DJIは2018年5月、マイクロソフトと戦略的パートナーシップを結び、DJIの汎用的なドローン(Phantom、MavicやInspireなど)のSDKを、Windows向けにリリースすると発表しました。さらに、DJIはMicrosoftのクラウドサービスである「Microsoft Azure」を導入することも発表しました。

●Airwareが事業停止に追い込まれた本当の理由

これまでもドローン関連企業がリストラをしたり事業停止になるというケースはありました。その多くはハードウェア本体の開発の失敗や、DJIとの販売競争に敗れるといったものでした。今後、ドローンの機体を開発するベンダーは、「DJI一強」という環境下で、どのような戦略を打ち出すのか問われることになりそうです。

では、なぜAirwareは事業停止に追い込まれたのでしょうか。

Airwareは、当初から商用や業務活用市場をターゲットに、機体開発よりもアプリケーションやソリューションの開発に注力してきました。同社を支援していたのが、GEやCaterpillar、シスコシステムズといった企業であることからもわかります。ユーザーとなるターゲットは、非常に有望だったといえるでしょう。

筆者は、同社がつまずいた理由は、「技術アプローチのあり方」であったと想像しています。なぜならAirwareは当初、ドローンのOSを開発するポジションを目指していたからです。以下の記事は、2014年に公開されたAirwareのCEOであるダウニー氏のインタビューです。少し長いですが、TechCrunchより引用しましたので、紹介しましょう。
父も祖父もパイロットだったダウニー氏が2011年に創業したAirwareは、最初にドローン用のオペレーティングシステムを作った。このオペレーティングシステムを搭載したドローンは、いろんな商用目的にカスタマイズできる。たとえば農業用とか、土地の管理、各種の遠隔点検、野生動物の密猟防止など。オープンソースのドローンフレームワークは多くの企業顧客にとって細かい不満もあるが、でも専用機を一から作るのは一般企業にとって難しすぎる。そこでAirwareのプラットホームが無人航空機ハードウェアのすべての基本的な機能と操縦ソフトウェアをOSとして提供し、またドローンが集めたデータの収集や送信をクラウドサービスで行う。

記事中に「OS提供」という記述があります。ドローンにとってOSは非常に重要なポジションで、ハードウェアに大きく依存する部分です。つまり、AirwareはDJIと競争関係にあったのです。多くの会社がDJIの機体にソリューションを対応していったのに対し、Airwareは最後までDJIと対峙しました。もっとも、最後は自社のオリジナル機体開発で力尽きたという話もあります。

●今後のドローンビジネスで注目すべきもの

Airwareも途中から細かい戦略転換を行い、取得したデータの解析にも力を入れてきたようです。しかし、ドローンが収集したデータ解析のビジネスは、各業種・業界でそれぞれの特性を活かした過酷な競争が始まっており、そこでの差異化戦略が必要になっています。

現在、Airwareはやり残したことをしたり、赤字を弁済するために資産の売却に奔走していいます。2016年に買収したRedbird社においては、フランスのドローンサービス提供会社Delair社による買収が決まっており、Delair社はRedbird社のソフトウェア、知的財産、そして26人の従業員を手に入れることになります。

このようにドローンビジネスは第二ステージを迎え、各ドローン関連企業は、必要に応じて大胆な方向転換を迫られてきます。今後は各社が独自の強みを活かした戦略を、どのように打ち出せるかが注目ポイントになるでしょう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。