警備、ドローンにAIの目、対象を認識、自動で追尾(Innovation)

ドローンを活用した空からの警備の技術を磨くセコム。2015年にデビューした初代機より航続時間や速度を向上させたうえで、AI(人工知能)や高性能カメラを搭載した次世代機の開発を急いでいる。より広いエリアを守り、自らの「目」で不審者らを追う。20年にも投入する予定。ドローン警備が人手不足に苦しむ業界を助ける日も遠くなさそうだ。
「安全で迅速に現場に駆けつけられるドローンは、今後の警備に欠かせない技術になる」。セコムの中山泰男社長は警備の未来の姿に思いをはせる。警備対象や犯罪などが多様化するなか、自由に空を飛び回れるドローンは監視や追跡の切り札になると期待する。
セコムは15年に自律型飛行監視ロボット「セコムドローン」の提供を始めた。契約者の敷地内に不審な車や人が侵入すると、ドローンが接近してナンバープレートなどを撮影。セコムのコントロールセンターに画像を送り、追跡などに活用する。常駐警備員などの負担が軽減できるといい、18年には山口県の刑務所に導入した。
飛行時間6倍
現在、同社は現行機種の性能を大幅に塗り替える次世代機の開発を急ピッチで進めている。技術課題の一つが航続時間・距離の大幅な延長だ。バッテリー容量を大幅に増やし、離着陸を含めた連続飛行時間をこれまでの10分から60分にする。
ドローンが離着陸する「ポート」と呼ぶ設備に大型の電源設備を取り入れるなどして、充電時間も従来の20分の1の3分にする。機体やプロペラの設計にも新たな工夫を施す。金型設計の段階からプロペラの角度や形状などを見直し、最高速度は毎秒10メートルと現状の2倍になる構想だ。
バッテリー容量と速度の向上で、航続距離は大幅に延びる。単純計算では片道約18キロメートルまで飛ぶことが可能になる。監視対象をはっきりと映し出せるように減速する場面などもあるため、実際には片道8・5キロ程度で運用するという。
ドローンの基本性能を現行よりも軒並み引き上げたうえで、運用面でも革新を目指す。尾坐幸一ゼネラルマネージャーは目指す姿を「自分で見て自分で追うドローン」と表現する。現在は地上に設置したレーザーセンサーと全地球測位システム(GPS)から情報を得て、対象物を追跡する。レーザーセンサーが検知できない場所をドローンは守れない。
高低差もなんの
例えば、現行機は駐車場など平たんで限られた敷地の警備には適しているが、起伏がある場所などには向いていない。センサーの設置場所より高低差が大きかったり、凹凸で陰になっていたりするとレーザーの網にかかりにくいからだ。
地上に設置するレーザーセンサーの警戒範囲は半径30メートル程度。広域を警備するには複数のセンサーを配備する必要がある。航続時間・距離などから半径500メートルを超えると、ドローン1機では監視できない。
これに対して次世代機は、警備対象の敷地や施設の外周に監視センサーを配置。異常を検知すると、ドローンがGPSなどを使って現場に向かう。検知エリア付近に到達した後は旋回して捜索し、侵入対象を発見する。
ここまで現行機とほぼ同じだが、次世代機は搭載したAIが撮影した画像から侵入者らを見極ることができる。AIは事前に背格好などの特徴を学ぶことで、人か動物かを区別したり、監視対象の車かどうかを判断したりして自動で追尾する。
カメラという自らの「目」でAIが対象物を認識するために、内蔵するプロセッサーの性能も大幅に向上させる。従来型はレーザーセンサーやGPSが提供する位置情報などを計算するのが限界だったが、次世代機に搭載予定のプロセッサーは処理能力が約3500倍になる予定だ。
警備ドローンへの関心は急速に高まっている。セコムの進藤健輔執行役員も「広大な土地を持つ施設や起伏のある場所の警備を求める顧客の声が増えている」と手応えを感じている。
次世代機は敷地内に離着陸できるポートを複数設ければ、自動車のテストコースや発電所などの広大な敷地を持つ施設を1台のドローンで警備することも可能になる。「ドローン警備員」が業界の明日を担う存在の一つになるという期待が広がる。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。